「今、自分がすべきことを選択できる能力」はセルフリーダーシップを高めるためには、必須の能力です。ですが、業務における「優先順位」の考え方とは一致しない部分も発生します。
やる気満々のKさん25歳、入社3年目の社員と課長が衝突。このお話は課長面談の際に、伺いました。どういうわけか、S課長が想定している優先順位とKさんの対応が一致しないとのこと。しかもついに、「優先順位を考えて仕事をしろ!!」と怒鳴りつけてしまったらしいのです。まぁ、よくあることかもしれません。
ですが、Kさんは「もちろん考えています」と一言。「だったら、この仕事が今の時点で出来ていないのはおかしいだろう?!」と言うと、「それを先行すると、昨日は定時退社ができませんでしたから」との回答。S課長はこの段階で言葉を失ったそうです。
優先順位と働き方改革、異質なことのようですが実は考え方を明瞭にすべきことでもあります。S課長は「最近、想定していないことを言われるので、どう対処したらよいのか言葉を失います。言っていることを100%否定はできない気もしています」とのこと。
「そもそも」を明確にしましょう、とアドバイスをしてみました。
「そもそも1」は優先順位の定義の問題です。明らかであることと、論理的であること、実務的判断がしやすいこと、この3点を抑える必要があります。
特に「実務判断」のためには、事例を用意する必要があります。このあたりの業務は5年目あたりの社員に作成を指示してみることも面白いでしょうね。と伝えました。これで優先順位マトリクスが完成します。
次に「そもそも2」です。働き方改革を視野に入れると定時退社が基本になりますが、1日の仕事のスケジュール化、およびチーム内での共有が必要になります。
スケジュールをオープンにすると進捗管理をされていて嫌だという社員もいますが、それは変更、修正が多いからでしょう。別にそのことにはこだわらせない事です。
ただし、仕事が後手になり続ける社員には指導が必要です。スケジュールが後ろ倒しになるということは、目標達成にもっとも遠い社員でもありますから。
そのうえで、スケジュール×優先順位で1日の業務の生産性を高める努力しかありません。と、ここまでS課長に話したところで、彼は「とはいっても営業はお客様次第ですから」と弱音を。「そんなものはどこの部署でも、どこの会社でも同じですよ」と話しながら、「予定外業務」を優先順位マトリクスにどのように織り込むのか、定時退社はMUSTではないことを思い出してもらいました。
難しいことは何もないのです。「やってみよう」「変えてみよう」という意思を現場リーダーがもてるかどうかなのです。今までのやり方に、働き方改革というルールが入ってきたのですから、「変える」ことが当たり前なのですよ。
ここまでS課長に話したところで、彼から「変えるタイミングはいつがよいのでしょうか?四半期の括りでしょうか?」と質問が。
私はわざと大きな声で笑いました。「この程度のことを変えるのに、時期の検討が必要なのですか?」「変えることが必要ならば、今日変えるしかありませんね」と。
あれから3か月。彼は2名の若手社員に「仕事の進め方でやりづらいことを変えよう」担当にしたそうです。その成果はまだ伺っていませんが、とても楽しみです。
企業の目標達成には、ビジネスパーソが主体的にセルフリーダーシップを発揮する必要があります。その理由は、「予定外尾業務」「想定外の業務」が増え続ける時代だからです。
社内価値に目を向けた仕事の仕方から、市場価値に目を向けた仕事の仕方をするためにも、「セルフリーダーシップ」が必要です。
次回は、市場価値に目を向けたセルフリーダーシップの実例をお話しします。