一昨年、女性活躍推進アジア50選に選ばれている、三州製菓さんにインタビューをさせていただいた時のことです。
こちらの会社では、まだ少ない女性管理職が自由に発言できるようにするために、管理職会議の一定時間、男性が発言しない時間、というのを設定なさっていました。
面白いですね。そして、ストレートな取り組みだと驚きました。ですが、この「ストレートさ」こそ、女性が活躍するための「育成の場」を現実的に作っているのだと感じます。
問題は、「会議の席で発言することに慣れる」ことなのでしょう。そして、この問題は短期的な鍛錬であって、発言の中身を鍛えるためには、別の課題を用意する必要があるのだと思います。
「発言の質」をどのように向上させるのか、慣習にとらわれない視点や発言方式をどのように作り出していくのか、ということです。
女性の活躍を促すうえで、足かせになるのが「今までの慣習」です。男性管理職中心の会議と女性管理職が入った会議ではどのようなことが違ってくるのでしょうか?
これはあくまでも研修講師として観察した所見ですが、女性管理職は社員の「個」の能力を発揮することに着目している場面が目立つが、男性管理職はチーム、組織の
「成果」に着目している場面が多いように感じます。
言い換えると、女性管理職は個の能力が高まることにより、組織の創造力が向上するというプロセス型の発想。それに対して、男性管理職は、組織においてリーダー
シップをどうするのか、というリーダー人材力に着目しているということです。
もちろん、会議のテーマによっても異なることでしょうが。
どちらが良いとか、ということではありません。ただ、時代は「個」の能力の向上を期待していることは間違いありません。正しくいうと、「個」の能力を引き出す、見出す、管理職の能力を必要としています。
それは、人事評価の結果で判断することではなく、自分の目で見極める、見つけ出す、活躍の場を提供する、という管理職の能力です。そのうえで、「想像力」「創造力」をもった人材に育てることです。
この能力は、最初から描かれたレールの上を進んできた男性管理職には難しいことかもしれません。私が知っている限り、女性の管理職でも最初から「エリート」として扱われた人は同じです。
今、現役で管理職をしている女性の中には、当世の「女性活躍推進」のおかげで管理職になれたと言われている人もいるでしょう。ですが、その中には、ネゴシエー
ション力が高く、縁の下の力持ちに徹してきた人もいることでしょう。生きづらい会社組織の中で、この能力をたくましく鍛えてきた方々です。
それだけに、彼女たちの発言は、男性管理職には「何を言っているのだ」と思うこともあるのかもしれません。ですが、それは「あなたが知らいない会社」を知っ
ている管理職の発言だと捉えることが大事ではないでしょうか。
「社長 島耕作」に出てくる「部長 風間凛子」は、会議の席で「一人を犠牲にして、成功する会社など、長続きはしない、社会にとって必要な会社ではない」と断言します。
組織の理論は組織をより良い方向に動かすためにあり、個を大切にすることは未来につながることにある、と島耕作が言っているようにも感じます。(笑)
女性活躍を本当に企業の力にするためには、セルフリーダーシップの育成は欠かすことができません。男女を問わず、想いと方向性をもちながら、「個」の能力を鍛え、磨くことが、企業の力を強くします。