3年前、長くお付き合いをさせていただいている会社が、「オフィス改革プロジェクト」を立ち上げました。1年前には、フリーアドレスはもちろんのこと、打ち合わせスペースや立ち話型ミーティングなど、充実したオフィスデザインが際立っていました。社員の方の笑顔も増えたように感じました。
ところが打ち合わせに伺った際に、「成果が出てこないのです」と総務人事やプロジェクトのご担当者様から苦い言葉が。
よくよくお話を伺うと、確かに社員間のコミュニケーション頻度は多くなり、情報共有もできているようだが、その先が形になって見えてこない、というのです。
言い換えると、社員同士はいろいろと話をするが、創造力やクリエイティブな行動が欠けているということなのでしょう。プロジェクト担当者にしてみれば、「何のために」と言いたくなるところです。
そこで、1つ質問をしてみました。「確かに社員間のコミュニケーションが広がり、データベースにはない情報を知り得る、という意味では成功なのでしょう。ですが、得た情報から、また提供した情報から、双方がどのようにその後の行動をするのか、という具体的な行動や方向性の確認、ゴールの設定はしているのでしょうか?」と。
回答は「そこまでは管理していない」とのこと。「管理というよりは、そこをオフィス改革後のアフターフォローとして捉えることが必要」とアドバイスをしました。
また、小スペースで気楽にチーム内ミーティングができることも素晴らしいことなのですが、この場合には効率を意識する習慣づけも必要でしょう。少人数である以上は、会話の進め方、リードの仕方にも工夫をしないと成果を追う習慣が希薄になってしまいます。
こういう話をしながら、「ところで、コミュニケーションは何のために必要なの?
情報共有をするということは、そこにはどういうルール行動が必要なの?」と問いかけてみました。
答えは「コミュニケーションは相手とよくわかり合うため」「情報共有は、知らないために重複業務などを発生させないため」とのこと。「その先があるのでは?」と突っ込んでみました。
いつも研修でお話しするのですが、コミュニケーションとは、相手を自分の思ったとおりに動かすことが目的。
また、情報共有をしたら、共有した人はその情報にもとづき、それぞれに何をするのか、という自分の役割や行動を明らかに示すことが成果に貢献する。と説明しています。
どのような改革も改革がゴールではなく、その改革に基づいた成果を出すことがゴールのはずです。
そのためには、改革後のアウターフォローを十分に検討し、立案しておくことが大切です。
この会社でも、今春から「コミュニケーションから生まれる私たちの創造力」というテーマでミーティングや会議の質的な効率の高め方を目指す取り組みがはじまりました。
担当者は「オフィス改革でモチベーションが上がったことは事実ですが、浮かれ気分でいたように感じています。これから、会議の進捗がそのままディスプレイに反映され、一目でわかる進捗度表記を採用しようと考えています。もちろん、ゴールに対する進捗度です」と話していました。
きっと今期は実績にその成果が出ることでしょう。講師としては一安心。最後は社員力が企業力を創っていくのですから。多くの企業で、「改革」という言葉があふれ出しています。ゴールを曖昧にせずに、取り組むことが大事です。
改革は多くの社員力を伸ばすものであって欲しいですね。