大坂なおみ選手の「自分はできる」と心に言い聞かせて、集中を高める、というストレスコーピングは素晴らしいという一言です。
「自分はできる」は「セルフトーク」というコーピングの方法の1つです。
またミスショットでイラっとした次の瞬間に「自分はできる」と笑顔に切り替えたシーンは自分の「ストレス反応」を鎮めるコーピングをしています。
さらにセリーナ・ウイリアム選手が主審に抗議しているシーンでは、彼女は壁側を向いて、そのシーンを目に映らないようにしていました。これは物理的コーピングという方法です。
メンタルが弱点だと言われてきた選手をここまでコーチングしたコーチの力は偉大ですね。
何よりも「自分はできる」と自分を信じることができるようになるためにはかなりの練習、しかも本人が納得できるような「論理的な強化練習」を繰り返してきたのでしょう。
コーチは根拠の無い「才能があるから自信をもって」というような考え方を捨てさせたのでしょう。「勝つために必要な能力を分析し、強くなる仮説を立てた。
そのデータに基づいた練習をすべて行い、その結果を何度も検証し、補強してきたのだから、君の実力は万全だ。自信をもつことは当然のことだ」と。
まさに最強のPDCAです。
大坂選手の場合、マイナス思考が強く、一度ミスをすると取り返すことができない、と思い込む傾向があったそうです。確かに負けた試合映像を見ると、その通りです。
彼女には「2020年には世界No.1の選手になる」というビジョンがあり、言葉にしていました。だからこそ、「根拠の無いビジョン」に終わってしまうという心の痛みが強く、試合中に涙を流すような状況が発生したのです。
ですが、「根拠のある自信」をもった彼女は、コーピングスキルを実践することで、大きな成長を遂げたということです。
では、部下育成でも、同じようにコーピングを活用することはできるのでしょうか?
もちろんできるはずです。特に営業職向けのストレスコーピング研修を専門にしている講師もいるほどです。
ただ、ストレスコーピングを実践するためには、たとえば営業職だとしたら、かなりの「営業スキル」の強化教育が必要となります。営業には、専門知識とニーズをつかむ、もしくは新たにニーズをつくる、というスキルが基本的には必要です。
そのためには、詳細なスキルアップ項目があります。それをすべて期待値までに引き上げたうえで、「数字が上がらない」「あと一歩で獲得できなかった」というストレスへのコーピングを身につける必要があります。
果たして、それだけの教育をしている「営業部門」はあるのでしょうか?
研修では、部分改善はできます。ですが、常に自分に対してPDCAを回していくというのは、なかなかできないことです。上司にしても、その成長を待っているだけの時間はない、と腹の中では思っていることが多いのではないでしょうか。
そうなると「数字」だけで部下を見てしまうことになりがちです。そこに「ストレス」が双方に発生します。
コーピングは「逃げ」の技術ではありません。ビジョンや「なりたい自分」を明確にし、そのうえで「根拠のある自信」を持たせることが土台になければ役立ちません。
営業職は、「勘がいいから大丈夫」という考え方では、すぐにストレスの餌食になってしまいます。土台がないのに、ストレスコーピングを導入しようとしても、結果はでないのでしょう。
ビジョンをもち、根拠のある自信をもつための論理的な教育の必要性を大坂選手の活躍から学びました。
まずは、セルフリーダーシップを学びましょう。自己PDCAの習慣が身に付きます。